25セントの恋人ごっこ

ねこがかわいい。本を書く。

日本学生支援機構について、いくつか調べたこと。

先日、

私は奨学金を借りなかった(安いところに行き、大学院は諦めた)から、奨学金システムが返済滞納者によって破綻してもいいけれど、奨学金を返さないということは、どんどん奨学金の貸出が渋くなるってことだよね。返せそうな人しか貸せなくなる、という状況になる。

というツイートをしたところ、

ならないっす育英会は、1種(無利子)をガンガン減らしていて、2種(有利子)を拡大中。2種の財源は財政投融資や銀行による融資です。つまり、返済しないから奨学金財源が減るという構図になっていません。

という引用RTを受けた。

私の発想は

奨学金に関して、とみによくある誤解らしい

とのことなので、よくある誤解らしい。

といっても、私もリプライ相手もソースを提示していないので、調べてみようと思った。

以下少しだけのやりとり。

見事にかみ合っていない感じがするのは私のコミュニケーション能力の問題である。

わたし

ありがとうございます。返済されていないのにどうして財政投融資や銀行の融資が続くのでしょうか?

 

あいて

返済されてるから、ですね。元は十分に取れている、ということです。でなければ融資引き上げられているはずです。

 

わたし

 では返済されていない状況が続けば引き上げるのではないでしょうか?短期的な資金の話をしているつもりはありませんでした。

 

あいて

長期的にはそうですが、育英会はすでに債権回収会社への債務売却をやっています。どうやら焦げ付きはなさそうです。なんせ大学職員をタダで債権回収に使える「ローン会社」に勝てる銀行はないでしょうしね

つまり、育英会(2種)は金融投機商品になってるってことだよ

 

これらの会話から、主義主張は脇に置き(私にはない)、数字などで確認できそうなものをピックアップしてQ&A形式にしてみた。

(2015/11/08追記

 個人攻撃をするための記事ではないので、会話からツイッターのID等を外しました。)

 

 

Q.1種(無利子)をガンガン減らしている?
A.No.少なくともここ十年では。

JASSO事業の取組みと今後の展開

より、

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人数ベースでは平成16年度の44万人から落ち込み、25年度で43万人まで回復しているが、金額ベースでは横ばいもしくは微増が続いている。

平成24年度、25年度で無利子が増えているのは、震災の被災者のための追加枠らしい。

よって無利子の奨学金がガンガン減らされているとは読み取れない。

※震災分を加算して減ってないというな、という指摘があった。

事業報告によると、平成24年は45.53億円、平成25年は37.36億円が震災のための「緊急採用」に該当するようだ。

よって平成24年は通常分は2,721億、平成25年は2,874億円となる。

震災復興特別会計からの借入金も平成24年は33.5億円、平成25年は57.2億円であるから、震災分を差し引いたとしても、第一種が減っているとはいいがたいことになる。

それ以前に、2,500億円前後で安定していることが読み取れると思って、注記だけにしていたのが誤解される原因だったようだ。

 


Q.2種(有利子)を拡大中?
A.Yes.前Q&Aを参照。

有利子は人数、金額ともに増え続けている。

有利子の伸びほどには無利子が伸びていないので、誤解が生じるのかもしれない。

いずれにしても前Q&Aに影響は及ぼさない。

 


Q.2種の財源は財政投融資や銀行による融資?
A.Yes.ただしあくまで一部。

日本学生支援機構のIR情報

より

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財政融資資金(97.9%)

返還金(60.2%)

民間借入金(47.2%)

財投機関債(15.1%)

財政融資資金等償還(-120.4%)

償還分をどうとらえるかだが、支出資金の中でも27%を返還金が占めている。

償還が財政融資資金および財投機関債の償還にあてられ相殺されているとすると、返還金は60%程度になる。

これを「返還金を財源としていない」とするのはどうだろうか。

年収の27~60%を占める収入先は収入減としていない、と言えるだろうか。

そもそも、財源に返還金が使われないとすれば、返還金は一体どこへ行くのか、という気がするが。



Q.2種は金融投機商品?
A.No.機構が発行する債券の格付けは、格付投資情報センター(R&I) ではAA、日本格付研究所(JCR)ではAA+。

もちろん、投資か投機かは個人的な印象が持ち込まれるが、AA,AA+であり、年利0.1%の商品を「投機」と呼ぶ人はそうそういないだろう。

債券も金融機関借入も0.1%である。

個人向け国債でいえば、固定5年(0.05%)よりは良く、変動10年(0.22%)よりは悪い。

日本国債と同等のものを普通は投機商品とはいわない。



Q.債権回収会社への債務を売却?
A.No.少なくとも決算資料等からはそのような記述は見つからず。
債権回収会社へ回収業務を委託している部分があるが、当然のことながら、業務委託と債権譲渡は異なる。

持ち家と賃貸ぐらい違う。
ないことを証明するのは厳しいので、債権を譲渡、売却している情報があればご一報いただきたい。

(ついでではあるが、債務ではない、売却するとすれば債権である)


Q.返済が滞納されると破綻する?
A.No.ただし最初のうちは。

第二種学資金の特例的な利率を定める方法

より、第二種奨学金の利率の計算方法が書かれている。

安定して低利率で市場から資金を調達することができれば、利率も今の程度で推移できると思われる。

しかし、返済が過度に滞納されれば、財務状況悪化とみなされ、格付けは落ち、本当に「投機」扱いにされるだろう。そうなれば、低利率で調達することは困難となり、市中の銀行等の教育ローンに限りなく近づいてくることになる。

そのとき、それを破綻していない、と言い切ることができればあるいは。

 

 

繰り返しになるが、奨学金制度に物申すわけでも、個人に対してどうこうでもなく、ソースがないなら調べよう、調べたから公開しておこう、というだけである。

 

※追記(2015/11/01)

これほどまでに反響があると思わなかった。

しいていえば、ソースを出すことは重要である、ということが言いたく、ブコメ、あるいはツイッター上ではおおむねきちんと理解されているようで安心した。

(一方、氏および氏のフォロワーには全く届かなかったようではあるが、最初からそういった期待はしていないので、それは仕方ないと思う。)

 

まとめというか、再確認。

 

この記事で言っていること。

・第一種(無利子貸与)は総額ではガンガン減っているとはいえない。

・第二種(有利子貸与)は年々貸与者、総額ともに増加中である。

・第二種は返済額も少なくない額が資金源に含まれている。

・機構が発行している債権、借入金はAA,AA+クラスで年利0.1%であり、投機とは呼べない。

奨学金債権を債権回収会社に売っている事実は見つからない。

・滞納は財務悪化により利率の上昇を招き、長期的には制度崩壊を起こすかもしれない。

 

この記事で言っていないこと。

・借金は何としても返すべきである。

・借金は踏み倒してもよい。

・機構は悪の組織である。

・機構は善の組織である。

奨学金という名前の金貸しをやめるべきである。

・利率が市中より低いから感謝すべきである。

 

 

以上。

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