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25セントの恋人ごっこ

ねこがかわいい。本を書く。

賃金等の時効と支払時期について(労働者のための労基法他)

労働法 その他

ブラック企業は法律を盾にして絶対潰すんだ!!

賃金等の時効について書きました。

 

 

さきにまとめです。

 

・月給、残業代、賞与等の賃金請求権は 2年 (年次有給休暇も2年)

・退職手当の請求権は 5年

・退職時の未払賃金は 7日以内(退職者の求めがあれば。使用者の義務) 

・計算ミスで多くもらっていた給与は 10年 遡って請求される。

・計算ミスを知っていたにもかかわらず言わなかった場合は 20年 遡って請求される

 

 

よくある問題3問にわけて法律を確認していきましょう。

 

問。

1.未払の残業代はいつまでさかのぼって請求できる?
 就業規則上受け取る権利のある手当があることがわかった。いつまでさかのぼって請求できる?(賃金請求権)


2.退職をしたので未払分の賃金がすぐ欲しい!(金品の返還)


3.就業規則上受け取る権利のない手当を受け取っていた。どこまでさかのぼって返さなければいけない?(不当利得)

 


1.未払の残業代はいつまでさかのぼって請求できる?
 就業規則上受け取る権利のある手当があることがわかった。いつまでさかのぼって請求できる?(賃金請求権)

これは労働基準法第百十五条に時効の規定があり、
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html

労働基準法第百十五条

(時効)
第百十五条  この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する


とあり、二年間(退職金のみ五年間)で時効を迎えてしまうため、未払残業代等未払賃金は二年以上はさかのぼることはできません。

未払残業代を請求するのは退職した後のケースが多いと思いますので、請求をするつもりであれば残業をしていたことを示す証拠(タイムカードや、メールの送受信履歴等出退勤のわかるもの)をあらかじめ確保して会社側に内容証明郵便などで請求しましょう。会社側が拒否をすれば(たぶんすると思いますが)、労働問題に詳しい弁護士に依頼するのが賢明だと思います。

平成18年4月より訴訟前に両者の協議を地方裁判所で行う「労働審判」という制度もできました。

労働審判手続

 平成18年4月1日から始まった労働審判手続は,解雇や給料の不払など,事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを,そのトラブルの実情に即し,迅速,適正かつ実効的に解決することを目的としています。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_02_03/index.html


しかし、この労働審判、あくまで専門家を置いての話し合いの場所であり、しかも最低でも数カ月かかり、合意が得られなければ結局は訴訟になってしまう、という少々弱いものになります。
その他、会社の労働組合に所属していればそこの労働組合、それ以外にも個人で加入できる労働組合を探し加入し、交渉を行う方法などがあります。
相談先としては当然のことながら「労働基準監督署」がありますが、まずは無料の相談先、として活用する程度だと思った方が良いと思います……あまり期待はしない方が……

就業規則に記載されている手当が受け取れることがわかった場合も原則的にはさかのぼれるのは二年間ですが、大抵は就業規則に「支給は届出があった月からとする」といった文言がセットになっていると思います。交渉の余地はありますが、手当の支給基準をどのようにするかは就業規則によりますのでさかのぼりは少々厳しいと 思います。




2.退職をしたので未払分の賃金がすぐ欲しい!(金品の返還)

労働基準法第二十三条

(金品の返還)
第二十三条  使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
○2  前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。


とありますので、退職後未払の賃金がある場合には「本人の請求」によって「七日以内」に支払わなければいけないこととなっています。
賃金が当月締め翌月払いなどのケースで本来の支給日よりもはやく欲しい場合ですね。

ただし、(就業規則労働協約で支給要件を明確に定めた「賃金」と認められる)退職金に限り、通達で

「退職手当は、通常の賃金と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りるものである」(昭和63.3.14基発150号)

とされていますので、この限りではありません。



※会社が倒産あるいは事実上倒産していた場合は?
「未払賃金立替払制度」というものがあり、独立行政法人労働者健康福祉機構によって、賃金の八割まで立替えられることができます。

未払賃金立替払制度の概要

厚生労働省のサイト)
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/tatekae/

独立行政法人労働者健康福祉機構
http://www.rofuku.go.jp/

 

 

3.就業規則上受け取る権利のない手当を受け取っていた。どこまでさかのぼって返さなければいけない?(不当利得)

これは労働基準法には規定がないため、民法の規定によります。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html


まず「会社側(経理など給与計算をする側)がミスをした場合でも返さなくてはいけないのか」ですが

第四章 不当利得
(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

にあるように、会社側のミスであっても受け取る理由のなかった賃金についても返還義務が生じます。

次に「過支給であることを知っていたかどうか」でわかれるのですが、
七百三条により「その事実を知らなかった場合(善意の受益者)」は「その利益の存する限度において」ですので、受け取った額を返還すれば良いことになります。
自分に本来支給理由がないのを知っていた場合は「悪意の受益者」とされ

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

当該利益の金額だけでなく、利息も払わなければいけないことになります。
利息については、

(法定利率)
第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

とあり、年5%とされています。


そしてその期間ですが、

(債権等の消滅時効
第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する

とあるので、会社側は過去十年まで過払い分を請求することができます。
しかし、ここでも「悪意の受益者」は別とされ、

不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条  不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする

会社側がその事実を知ったときから三年間返還請求権を行使しない限り、時効は二十年なります。
通勤経路をごまかして多めに通勤手当をもらっているのが発覚した場合も、二十年にさかのぼって、しかも年5%の利息をつけて返還を要求される場合があります。


問題の解答まとめ


1.未払の残業代はいつまでさかのぼって請求できる?
 就業規則上受け取る権利のある手当があることがわかった。いつまでさかのぼって請求できる?(賃金請求権)
 →二年間、ただし手当等は就業規則をよく確認しておくこと。
  例外的に退職金は五年


2.退職をしたので未払分の賃金がすぐ欲しい!(金品の返還)
 →請求をすれば七日以内に支払う義務が会社にある。
  ただし、退職金については就業規則通りで構わないとされている。


3.就業規則上受け取る権利のない手当を受け取っていた。どこまでさかのぼって返さなければいけない?(不当利得)
 →その事実を知らなかった善意の受益者は十年。利息をつける必要はない。
  事実を知りつつも黙っていた悪意の受益者は二十年。年5%の利息を請求されることもありえる。



※余談
 労働基準法第百十五条による時効は「その他の請求権」も二年としているので、年次有給休暇も取得日から二年で時効により権利が消滅します。

(反対に言えば、取得日から2年間は権利を持っていることになります)

 

 

※さらに余談
 ちなみに、返還方法については、原則的には「全額払いの原則」により賃金との相殺は認められていませんので、賃金とは別に現金を持ってくるなり振り込むなりしなければいけません。

 

参考

stalemate.hateblo.jp

 


過払い分の賃金控除について可とする労使協定を結んでいれば可能になります。

通達に

「前月分の過払賃金を翌月分で精算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、法第二十四条違反とは認められない」(昭和23.9.14基発1357号)

とあるのでその程度であれば問題はないということになっています。

判例では

「賃金過払による不当利得返還請求権を自動債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺は、その行使の時期、 方法、金額等からみて労働者の経済生活との関係上不当と認められないものであれば、労働基準法第二十四条第一項の禁止するところではないと解する」(最小 昭44)

 

とあるので、会社側と労働者側が話し合った結果、妥当な範囲で以後の給与から引くことは全額払いの原則に反しないとされています。

 

 

以上です。どんどん請求して行きましょう。

 

 

労基法や賃金とはあまり関係のない小説ですが、だいたいお金の話の小説です。

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トクシュー! ‐特殊債権回収室‐ (Novel 0)

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